JBL 4320 モニタースピーカー考察

JBL 4320

JBL 4320 解説

JBLは1960年代にプロデビジョンを新設し本格的にモニタースピーカー市場参入し、JBL 4320は実質的にその最初の製品です。 前作のC50SMが“オリンパス”ベースであったのに対し、JBL 4320はユニットがプロスペックとなり、エンクロージャーも密閉型からバスレフ型に変更され、サイズは幅+20mm奥行10mm拡大され板厚は19mmとなっています。 低域にはJBL開発の成形気泡リング・エッジを採用(1.27cm以上のコーン振動可能)で、最低共振周波数は20Hzの38cmウーファー2215Bを搭載しています。 中高域には0.05mm厚のジュラルミン合金製ダイアフラムと、純銀製インピーダンス・コントロール・リングで可聴周波数の最高域まで輻射効率を高め、4オクターブ以上の広帯域再生を実現したドライバー2420とホーンレンズは2391を搭載しています。ホーンレンズ2391はスラントプレート音響レンズ(38゜で回折効果を高めるため6.3mm間隔に並べた11枚の傾斜プレートの正面は緻密に計算した双曲線カーブ)との組み合わせにより指向性が45゜×120゜大幅に改善されています。 当時のスタジオモニタースピーカーはアルテック604E同塾型ユニット+612Aエンクロージャーででしたが、JBL 4320の軽い低音と適度な量感と力強さ、中高域の輝きが見事にバランスされたシャープで新鮮な音はスタジオモニタースピーカーの新時代の幕開けでした。ロック音楽のエンジニアとして非常に有名なアラン・パーソンズ(一部のビートルズ作品、ピンク・フロイド、ポール・マッカートニー初期のソロ、ポール・マッカートニー&ウィングスなど数々のアーティストのエンジニア、アレンジャー、プロデューサー)がJBL4320を使用していたようです。ピンク・フロイドの名作「狂気」ではアラン・パーソンズがインタビューの中でJBL4320を使用したと語っています。日本ではその当時、東芝EMIレコードのエンジニアだった行方洋一氏もJBLファンで、中でもJBL4320は自宅でも愛用していました。雑誌FMレコパル(1981年5月号P26~27)に、行方洋一氏の自宅訪問の記事があり写真入りで紹介されています。オーディオ評論家では、菅野沖彦氏が自宅で愛用している写真が当時のオーディオ誌で紹介されていました。 周波数レンジは、多少ナローレンジで低域は反応が速い中低域をベースにし、高域をなだらかに降下させた見事なバランスを保っています。 日本国内でも大評判となりレコーディングスタジオをあっという間に席巻し、オーディオマニアの間でも大評判となりました。

● JBL 4320:1971年年発売
・2ウェイ・バスレフエンクロージャー(幅610×高さ760×奥行510mm)本体重量44Kg 梱包済総重量52Kg
【ユニット構成】低域:2215B・中高域:2420+2391・ネットワーク:LX5【クロスオーバー周波数】800Hz
【周波数特性】40Hz〜15kHz ±3dB 【指向特性】45゜×120゜【最大許容入力】60W(RMS)120W(連続プログラム)
【インピーダンス】標準16Ω 最低12.5Ω(175KHZ)【能率】97dB(新JIS)

JBL 4320

●JBL 4320 試聴・その他

もう、およそ27年ぐらい前だったように記憶していますが、友人宅でプリにマークレビンソンML-1L,パワーにSAE2500で聴きました。良く引き締まったJBL 4320に搭載されていたウーファー2215Bの低域に、若干柔らかく膨らみのあるパワーSAE2500の低域が絶妙にバランスしていました。JBL 4320にパワーをどんどん入れ、ピークで250W以上を入れSAE2500のオレンジに光るアナログメーターの針が左右に大きく振れていたことを覚えています。この時のJBL 4320のダイナミックな音は、いまでも記憶に残っています。高域不足については、大きなパワーが入れば全く不足感はなく、やはり大パワーを入れて使うことが前提だったような気がします。一方、小音量の時はそれは見事なバランスで実に魅力的な音で鳴っていました。
スペック、聴感上からも高域不足を感じ2405,075等のツィーターを追加を考え試してみるが、ほとんどの場合これにより全体のバランスを崩してしまう。辛うじての方法は、2420の上を切らず(つまりネットワークを追加しない)2405に直列にコンデンサーを追加し上に高域を添える程度に足す方法ですが、これとて満足な結果とはならいケースが多い。ベストなJBL 4320の使いこなし方は、結局はそのまま使うことになります。

●JBL 4320 中古マーケット状況

当時、多くのスタジオに納入され、さらに一般のオーディオマニアも購入したのでオークション等をコマ目にチェックしていると年に2〜3set出品されています。さすがに年月が経っていることから、最近は程度が良く無改造の中古品の入手は困難な状況です。極上品は2本1組の1Set25〜30万円程度しています。かなり精巧に作られた偽物のJBL 4320も多く出回っていますので、購入には細心の注意が必要です。例えば、下の写真にあるものはJBL 4320と表示していますが、知る限りにいては偽物と判定せざるおえないJBL 4320です。

【注意】偽物としか思えないJBL 4320の例

nise4320

(写真左)フロントのバッフル板がネジ止めされていますが、本物はネジ止めではありません。また、サンネットを止めるためのタボの出っ張りがなく、正面四隅に四角くあるネットの受けがありません。(写真右)サランネット上にあるプレートでJBLロゴがオレンジになっていますが、この時代の本物のJBL 4320は黒バックでJBLと書かれています。

●JBL 4320 当時の販売価格

JBL 4320:\392,800
JBL 4320WX:\413,400
*いずれも、1台の販売価格

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